【第14回】

<内容>

1.  制御系の特性と性能評価

1.1  定常特性と制御系の型

  

 

 上図のシステムについて,定常偏差e() 0に近いほど,制御系は優れた定常特性を持つという.

外乱v(t) = 0とし,定常偏差をラプラスの最終値の定理から求めると

  図面1.jpg

となる.入力r(t) tのべき乗,すなわち,R(s) = 1/s p, p = 1,2, を考えると

  図面1.jpg

となる.e() = 0とするには,上式の分母の極限値が∞になればよい.

 

したがって,一巡伝達関数 C(s)Gp(s) = 1/sk, kp となる.これは,入力信号に含まれる積分器の数以上を一巡伝達関数が持てばよいことを意味する.この積分器の数を制御系のという.

 

インパルス入力 R(s) = 1には0型以上,ステップ入力 R(s) = 1/s に対しては1型以上の制御系が必要となる.

 

 次に,外乱について考える.入力 r(t) = 0 として定常偏差を求めると

  図面1.jpg

となる.外乱 v(t) tのべき乗,すなわち,V(s) = 1/s p, p = 1,2, を考えると

  図面1.jpg

となる.e() = 0 とするには,分母の極限値が∞になればよい.したがって,補償器 C(s) = 1/sk, kp となる.

 

 一般には,入力と外乱に対する定常偏差を共に0とすることが制御系設計には望まれる.したがって,一巡伝達関数 C(s)Gp(s) ではなく,補償器 C(s) 自体に必要な数の積分器を持たせることが必要となる.

 

 

1.2  極と過渡応答による性能評価

  図面1.jpg

 

 上記システムの伝達関数の極は

    図面1.jpg

である.ただし,0z1である.このシステムの単位ステップ応答は

  図面1.jpg

となる.したがって,極の実部-zwnの値が小さいほど,出力y(t) は目標値1に速く収束する.さらに, z の値が大きいほど,減衰が速く,オーバーシュートも小さくなる.

 

上記のことより,極の位置が分かれば,ステップ応答の波形を把握することができる.言い換えれば,望みのステップ応答が得られるように,極の位置を指定することができる(下図参照).

    図面1.jpg

 

また,虚軸から左に遠く離れている極のモードは,速く零に収束する.したがって,虚軸に最も近い極をそのシステムの代表極と呼び,システムの応答はこの代表極のみの応答で近似することができる.

 

 過渡応答は,極のみでなく零点の値によっても左右される点に注意する必要がある.ステップ応答の良さを定量的に示す評価量として,以下のものが定義されている(教科書p.164の図3.78参照).

 1. 立ち上がり時間  2. 遅れ時間  3. 整定時間  4. オーバーシュート

 5. 行き過ぎ時間   6. 減衰比

 

 

1.3  閉ループ周波数応答による性能評価

 周波数応答に関しても,制御性能を評価する指標が定義されている(教科書p.165の図3.79参照).

 1. バンド幅  2. ピークゲイン  3. 共振周波数

 バンド幅は速応性の指標,ピークゲインは減衰性の指標となる.ピークゲインとオーバーシュートには対応関係がある.

 

 

1.4  開ループ周波数応答による評価

 

フィードバック制御系の諸特性を開ループ周波数伝達関数 G0(jw) = C(jw )Gp(jw ) によって評価する方法がある.

1)    安定度

 位相余裕とゲイン余裕を安定度の指標として用いる.余裕が大きいほど安定度は高い.

2)    速応性

 位相余裕≦90°のとき,ゲイン交差周波数 wp とバンド幅 wb との間には wb wp の関係が成り立つので,wp が大きいほど制御系の速応性も大きくなる.

3)    目標値追従性

 偏差は E(s) = S(s)R(s) となるので,感度関数S(s) = 1/(1+C(s)Gp(s)) が目標値R(jw) の周波数帯域で |S(jw)|<<1 すなわち |C(jw )Gp(jw )|>>1 となれば,偏差は小さくなり目標値追従特性は良くなる.

4)    外乱除去特性

 偏差は E(s) = -Gp(s)S(s)V(s) となるので,感度関数 S(s) = 1/(1+C(s)Gp(s)) が外乱 V(jw) の周波数帯域で |S(jw)|<<1 すなわち |C(jw )Gp(jw )|>>1 となれば,偏差は小さくなり外乱除去特性は良くなる.

5)    観測雑音遮断特性

 出力は Y(s) = -T(s)W(s) となるので,相補感度関数 T(s) = C(s)Gp(s)/(1+C(s)Gp(s)) が観測雑音 W(jw) の周波数帯域で,|T(jw)|<<1 すなわち |C(jw )Gp(jw )|<<1 となれば,出力への観測雑音の影響は小さくなり観測雑音遮断特性は良くなる.

6)    ロバスト安定性

 制御対象が (1+d(s))Gp(s) と変動するとき,変動 d(jw) が大きくなる周波数域で |C(jw )Gp(jw )|<<1 となれば,ロバスト安定性は向上する.

 

 

2.  制御系の設計法T

2.1  根軌跡による設計

   

 

 上図の制御系の極を望ましい領域に配置するようなKC(s) を設計するために,根軌跡法が利用できる.

 

根軌跡とは,与えたG0(s) = C(s)Gp(s) に対して,K0から∞まで変えたときの制御系の極,すなわち

  1 + KG0(s) = 0   図面1.jpg

の根を複素平面上に描いたものである.

 

根軌跡法によれば,根軌跡の種々の性質を利用して,上式を解くことなく,根軌跡の概形を把握することができる.いま

  eq1

とする.上式は実係数を持つ方程式であるので,根軌跡は実軸に対して対称である.ここで,次の性質が知られている.

 1K = 0のとき,極はG0(s) の極q1,q2,,qn(×で表示)に一致する.

 2K→∞ のとき,m個の極はG0(s) の零点z1,z2,,zm(○で表示)へ収束し,残りのn-m個の極は無限遠点へ発散する.

 3.無限遠点に発散する根軌跡は,実軸との角度が

図面1.jpg[rad], l = 1,3,5,

の漸近線を持つ.また,n-m2 のとき,漸近線と実軸は交点を一つ持ち,その座標は

eq2

で与えられる(教科書p.172の図3.84参照).

 4.実軸上の点の右側にG0(s) の実極と実零点が(重複度を含め)合計奇数個あれば,その点は,根軌跡上の点である(教科書p.173の図3.85参照).

 5.実軌跡が実軸から分離(または合流)する点は

 図面1.jpg

を満たす.ただし,逆は成立しない.

 

 

<演習>

1.制御系の特性と性能評価

11.定常特性と制御系の型

 定常特性,特に,定常偏差と制御系の型について学ぶ.

 

 

問題14-1

 下図のシステムについて考える.制御対象 Gp(s) ならびに補償器 C(s) を以下とする.

  

 

ここで,図面1.jpg である.

(1) 補償器をC1(s) としたときの入力R(s) から偏差E(s) までの伝達関数をEr1(s),補償器をC2(s) としたときの入力R(s) から偏差E(s) までの伝達関数をEr2(s) とし,Er1(s) Er2(s) の単位ステップ応答(単位ステップ入力に対する偏差の応答)を描画せよ.

(2) 補償器をC1(s) としたときの外乱V(s) から偏差E(s) までの伝達関数をEv1(s),補償器をC2(s) としたときの外乱V(s) から偏差E(s) までの伝達関数をEv2(s) とし,Ev1(s) Ev2(s) の単位ステップ応答(単位ステップ外乱に対する偏差の応答)を描画せよ.

 

 <ヒント>

図面1.jpg図面1.jpg である.伝達関数の積は関数series,伝達関数の和は関数parallel,伝達関数の逆数は関数inv,そしてステップ応答描画は関数stepである.

 

(注意)関数stepは,システム既存の関数(tfseriesparallel等)を使用したものしか描けない.したがって,ユーザー定義関数(tf1sysmult1sysadd1tfinv等)を使用した場合は,最終的に得られた伝達関数の分子多項式と分母多項式を用い,関数tfにより再度,伝達関数を入力する必要がある(下記参照).

> unit=tf1(1,1);

> gp=tf1(1,[2 1]);

> c1=tf1(5,1);

> sys1=sysmult1(gp,c1);

> sys2=sysadd1(unit,sys1);

> sys3=tfinv(sys2);

> sys=tf(sys3.num, sys3.den);

> [y1,t1]=step(sys,25,25/500);

> c2=tf1(5,[1 0]);

> sys1=sysmult1(gp,c2);

> sys2=sysadd1(unit,sys1);

> sys3=tfinv(sys2);

> sys=tf(sys3.num, sys3.den);

> [y2,t2]=step(sys,25,25/500);

> plot(t1,y1,t2,y2)

> grid('on');

> legend('Er1','Er2');

1tf(1, 1)で,-1tf(-1, 1)で入力する.

ブロック線図の等価変換を行って下図のようなフィードバック系に変換し,フィードバック結合の関数feedback1(教科書p.117)を用いてもよい.

 

 

【答】

   (1) 1型の補償器C2(s) を用いれば,ステップ入力に対して定常偏差は生じない.

 

  (2) 1型の補償器C2(s) を用いれば,ステップ外乱に対して定常偏差は生じない.

 

 

12.極と過渡応答による性能評価

 極の位置と過渡応答との関係を学ぶ.

 

 

問題14-2

 下図のように,複素平面に極を持つ3つのシステム

図面1.jpg

すなわち,

  pa1,a2 を持つシステム

 図面1.jpg

  pb1,b2 を持つシステム

 図面1.jpg

  pc1,c2 を持つシステム

 図面1.jpg

について考える.これら3つのシステムのステップ応答を描画せよ.

 <ヒント:零点・極・ゲインを用いて伝達関数を入力する関数zpk,ならびにステップ応答描画は関数stepを用いよ.>

> pa1=i;

> pa2=-i;

> pb1=-1/sqrt(2)+i/sqrt(2);

> pb2=-1/sqrt(2)-i/sqrt(2);

> pc1=-1;

> ga=zpk([],[pa1 pa2],1);

> gb=zpk([],[pb1 pb2],1);

> gc=zpk([],[pc1 pc1],1);

 

【答】極と原点との距離が固有角周波数wnを表すので,3つのシステムは同じ固有周波数wnを持つ.実軸との角度f が減衰性に関係しており,この角度f が小さいほど高い減衰性を示す.さらに,極が左にあるほど収束性が良いこともわかる.

 

 

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13.閉ループ周波数応答による性能評価

 ピークゲインと共振周波数ならびにバンド幅を計算する.

 

 

練習14-1

 例題3.48(教科書p.166)を行い,結果を確認せよ.

(注)伝達関数は,tfではなく,tf1で入力すること.関数の最小値を求める関数は,fminではなく,fminbndである.

¨         関数gnorm -|G(jw )| の値を計算する関数である.

¨         共振周波数wp |G(jw )| が最大値となる角周波数w ,言い換えると,-|G(jw )| が最小値となる角周波数w である.したがって,関数値の最小点を求める関数fminbndを用いている.

 

 

練習14-2

 例題3.49(教科書p.167)を行い,結果を確認せよ.

(注)伝達関数は,tfではなく,tf1で入力すること.

¨         関数fb図面1.jpgの値を計算する関数である.

¨         fb(w) = 0となる角周波数w がバンド幅wbである.

¨         バンド幅wbの定義は,|G(jw )| が定常ゲイン|G(0)| 図面1.jpg倍となる角周波数である(教科書p.165参照).よって,関数fb(w)

 y = abs(G(sys,j*w))-1/sqrt(2)*abs(G(sys,0));

とすべきである.この例では,|G(0)|=1.0であるので,abs(G(sys,0))を省略している.

 

 

2.制御系の設計法T

21.根軌跡法による設計

根軌跡を用いて制御系を設計する.

 

 

練習14-3

 例題3.50(教科書p.173)を行い,結果を確認せよ. さらに,補償器C(s) を入れない,すなわちC(s) = 1K = 1としたときの閉ループ系のステップ応答を描き,補償器の有効性を確認せよ.

(注)伝達関数は,zp2sysではなく,zpkで入力すること.零点,極,ゲインを求める関数は,sys2zpではなく,zpkdataである.ステップ応答を求める関数stepの引数は,step(sys,ts,ts/N)である.

  ugain(1)は使用できないので,tf(1,1)を用いること.

  グラフを閉じる関数はcloseplotではなく,closeである.

 

 

【レポート課題(13)(授業終了後にアップロード)

  RePORT