【第15回】

<内容>

1.  制御系の設計法U

1.1  ループ整形法による設計

   

 

 制御系の開ループ周波数応答 C(jw)Gp(jw) が望ましい特性を持つように C(s) を設計する方法をループ整形法という.設計には,直列結合の周波数応答を求めるのに適したボード線図が用いられる.

 

ループ整形法に用いられる補償器を以下に示す.C(s) はこれらの補償器を組み合わせて設計される.

 

a.  ゲイン補償器

  図面1.jpg

¨      位相特性は変えずに,全周波数域のゲインを増減する.

¨      ゲインを小さくすると,位相余裕やゲイン余裕が増して安定度が向上する.

¨      ゲインを小さくすると,ロバスト安定性や観測雑音遮断特性が向上する.

¨      ゲインを小さくすると,速応性が劣化する.

¨      一般には,他の補償器と組み合わせて使用する.

 

b.  積分補償器

  図面1.jpg

¨      低周波域のゲインを上げ,高周波域のゲインを下げる.

¨      この補償器のゲイン特性は右下がり(勾配:-20dB/dec)である.

¨      位相は全周波数で90°遅れる.

¨      定常特性(定常偏差→0)やロバスト安定性や観測雑音遮断特性が改善される.

¨      位相の遅れにより安定度は劣化する.

 

c.  微分補償器

  図面1.jpg

¨      位相特性を全周波数域で90°進ませるので,安定性と速応性が改善される.

¨      この補償器のゲイン特性は右上がり(勾配:20dB/dec)である.

¨      定常特性,ロバスト安定性,観測雑音遮断特性を劣化させる.

 

d.  1次遅れ補償器

  図面1.jpg

¨      折点周波数 w = 1/T より高い周波数域でゲインを下げる.

¨      ロバスト安定性や観測雑音遮断特性を改善する.

 

e.  位相進み補償器

  図面1.jpg

¨      1/T1 < w < 1/a1T1 の周波数帯域で位相を進ませることができる(教科書p.178の図3.88参照).

¨      制御系の安定度と速応性を改善するために使用される.

 

f.  位相遅れ補償器

  図面1.jpg

¨      高周波域( w > 1/T2 )のゲインを変えずに,低周波域( w < 1/a2T2 )のゲインを上げることができる(教科書p.179の図3.89参照).

¨      定常特性を改善できる.

¨      1/a2T2 < w < 1/T2 の周波数帯域で位相が遅れるというデメリットがある.

 

 

1.2  PID補償

 

 上図において,補償器の伝達関数を

      図面1.jpg

とするものをPID補償()と呼ぶ.ここで,Kpを比例ゲイン,TIを積分時間,TDを微分時間と呼ぶ.上式の右辺第1項が比例(Proportional)項,第2項が積分(Integral)項,第3項が微分(Derivative)項である.それぞれの頭文字をとって,PID補償制御)と言われる.P動作,I動作,D動作の主な働きを以下に示す.

 

 P(比例)動作偏差e(t)に比例した操作量を出す.比例ゲインKpを大きくすると速応性が向上するが,減衰性が低下する.Kpを大きくし過ぎるとシステムが不安定になりやすい.

 I(積分)動作偏差e(t)を積分した操作量を出す.外乱v(t)や制御対象のモデル化誤差等により発生する偏差を0にする働きがある.積分ゲインKiを大きくすると定常特性が向上するが,速応性や減衰性が悪くなる.

 D(微分)動作偏差e(t)を微分した操作量を出す.偏差の減少(増加)傾向を示す「傾き」を考慮することにより,オーバーシュート量(アンダーシュート量)を小さくすることができる.Kdを大きくすると速応性や減衰性が改善されるが,定常特性や雑音除去特性が劣化する.

 

 PID補償器の歴史は古く,主にプロセス制御用に用いられている.実際に用いられている補償器の約8割以上がPID補償器である.PID補償器には,P補償器,PI補償器,PD補償器,PID補償器というバリエーションがある.

 

 PID制御ゲインの決定は経験や試行錯誤に依るところが大きいが,ジーグラ・ニコルス(Ziegler-Nichols)公式と呼ばれる,限界感度法過渡応答法2手法が提案されている.この手法では,制御対象を 図面1.jpg あるいは 図面1.jpg により近似している.

 

 

1.3  フィードバック補償

 DまたはPD型補償器によるフィードバック補償は,2次系までの制御対象に対して,極配置の観点から見通しの良い設計法を与える.

 

D型補償器によるサーボ系の設計】

図面1.jpg

 

 制御対象Gp(s)は入力を電圧,出力を回転角としたモータ(電動機)のモデルである.上図は,内側にD型補償器によるフィードバック補償(速度フィードバック)を持つサーボ系である.サーボ系とは,目標値に出力値を追従させるものである.

 

目標入力(回転角)R(s)から出力(回転角)Y(s)までの伝達関数G(s)は次式となる.

        図面1.jpg

上式より,G(s)の応答はz wnに支配されるので,所望のz wnを与えれば,k0k1は次式より決定される.

        図面1.jpg

 

 

PD型補償器によるサーボ系の設計】

 制御対象Gp(s)が次式の2次系のものを考える.

        図面1.jpg

この制御対象は十分な減衰特性を持っていないため,ボード線図のゲイン特性が大きなピークを持つ.このようなピークがあるとGp(jw)C(jw)のループ整形が難しくなる.

 

上図のように,Gp(s)PD型補償器によるフィードバック補償を施せば,

        図面1.jpg

となる.たとえば

        図面1.jpg

となるようにk0k1を指定すれば,1次遅れ系の重ね合わせとなり,G1(s)のゲイン特性ではピークが消え,ループ整形が容易になる.k0k1は次式で求められる.

        図面1.jpg

 

 

<演習>

制御系の設計法U

11.ループ整形法による設計

 ループ整形法を用いて制御系を設計する.

 

 

練習15-1

 教科書p.180g. 設計例i) ゲイン補償ii) ゲイン・位相進み補償iii) ゲイン・位相進み遅れ補償を行い,結果を確認せよ.

(注)伝達関数を入力する関数tf tf1zpk zpk1tf2systfとすること.

グラフを閉じるコマンドcloseplot closeとすること.

plotコマンドを実行した後,xlabelylabeltitlegridコマンドを実行すること.また,凡例を示すlegendを追加すること.

 

 

12PID補償

 PID補償の効果,ならびに設計方法を学ぶ.

 

 

練習15-2

 例題3.51(教科書p.190)を行い,結果を確認せよ.さらに,P補償器,PI補償器を表3.9(教科書p.189)により設計し,それらのステップ応答とも比較してみよ.

(注)伝達関数を入力する関数tf tf1tf2systfとすること.

グラフを閉じるコマンドcloseplot closeとすること.

 

 

13.フィードバック補償

 DCサーボモータの速度フィードバック制御の設計を行う.

 

 

練習15-3

 c.設計例(教科書p.193)に従い,f0.110のボード線図を描け.

(注)伝達関数を入力する関数tf tf1とすること.

 

 

問題15-1

 教科書p.196の問題2.を行え.

 

 

問題15-2

 教科書p.196の問題4.を行え.

 

 

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授業評価アンケート 入力期間:平成2975日(水)〜810日(木)

 【ログインID・パスワード:統合認証システムと同一(総合情報処理センターから配布されたもの)】

 

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