長期的視野に基づくエネルギー政策を

H12.9.12 古津年章

これからもますますエネルギー使用は増え続け,我々は永久に原発に頼って暮らすことになるのであろうか? 使用エネルギーが増えれば増えるほど,熱汚染,資源浪費,ごみ問題,その他人間社会や人間の健康に副作用が出てくることは間違いない.「エネルギー消費は増え続ける」という前提の話で議論するのではなく,我々の社会は,これからの人間の生き方は,という本質的な問題に答えることが大事なのだ.

20世紀に達成した物質的な豊かさは,環境問題,南北問題,などの問題を生んできた.エネルギーや資源の浪費を人間の心の問題は,これまで十分議論されてこなかったテーマであるが,私はこれま極めて重要な問題とみる.微生物から人間まですべての存在に価値を認識し,子孫によりよい地球を残す,という価値観は,人間の心の安心と希望と健康に深く関係している.

  原発に限らずハイテク,巨大技術は,我々の生活を快適なものにしてきた.しかし,反面,様々な矛盾を生んできた.エネルギー消費地である都会と,原発などの立地が行われる地方との利害対立がひとつ.もうひとつは,巨大技術に頼るほど,我々の生活は他人依存になり,エネルギー問題,ゴミ問題などに自力で対処できないし,真剣に考えない社会ができてしまうことである.

  地方がそれぞれの特色を生かしたエネルギー生産を行う.小規模発電を分散化して各地に立地させ,情報通信ネットワークでそれらが相補的に働く分散型エネルギー供給システムを活用することは,エネルギーリスクを軽減し,地方の産業に活力を与え,また国民の創意工夫,新しい技術の開発を促進させる.何よりも,エネルギー消費効率を極限まで追求する様々な省エネこそが新しいエネルギー源と考える発想の転換が重要である.

そのような社会システムへの方向性を明確にした上で,現在の原発の役割を捉え直し,順次上に述べた分散型・省エネ型のエネルギー施策へ移行する,同時に原発の「安全な解体」,「跡地の有効利用」,「放射性廃棄物の処理」技術の開発などに全力を挙げることで,日本の原子力技術の優位性を示し,世界に貢献することが必要である.

まとめ

1.   エネルギー政策とは,供給を確保することだけではなく,我々の生き様にかかわる本質的重要性を持ったものである.人間と社会の心と体の健康を取り戻すには,エネルギーを節約し,子孫によりよい地球を残すという基本思想を打ち立てることが肝要である.

2.   上記を具体化するエネルギー施策は,各地域に適合した分散型エネルギー供給システムのネットワーク化と省エネ技術の推進である.エネルギー関係省庁,電力会社はそのような技術・システム開発を今後の柱と捉えるべきである.省エネは最も有効なエネルギー源である.

3.   省エネ・分散型エネルギーシステムの推進は,幅広い分野の産業を活性化させ,子供からお年寄りまでの創意工夫をうながし,生きがいを与え,景気を真の意味で回復させる.国のエネルギーリスクを軽減する.

4.   上記の基本思想に基づき,現在の原発の役割を位置づける.原発のアフタケアを重点に置いた技術開発を推進し,国際社会に貢献する.