省エネは最強の新エネルギー

H12.8.4 古津年章

 

 原発の是非や地球温暖化問題に絡んで,新エネルギー開発に対する期待が高まっている.太陽光,風力などだけで原発の代わりをさせることは難題であるが,それらを進めることに異論はない.しかし,重要なことを皆忘れているのではないか,と思う.それは省エネ.決して忘れていないって? いや重要なことは,エネルギー消費を減らすことは消極策ではなく,積極的にエネルギー源を作っているのだ,という認識である.

 

 省エネ技術により,電力消費が(絶対量でなくても,真夏のピーク電力だけでもよい)20%減ったとすると,それは現在の原発の発電能力の半分以上のエネルギー源と等価なのである.自然エネルギーだけで,原発の能力の半分以上を賄うのは至難の技だが,省エネには大きな可能性が秘められている.しかも省エネは,原発のように限られた業種に大量の資金を投入する必要がなく,エネルギーを使う全ての分野での工夫が生きる技術である.省エネ技術の推進は,幅広い業種での景気回復に繋がる可能性が大きい.

 

 省エネ技術にはITも大きく貢献するであろう.例えば,エアコンを高速ネットワーク化すれば,あるエリアのピーク電力を平準化するような間歇同期運転を行えるのではないだろうか.また,大規模の原発や火力発電所では,一台が事故や保守で運転停止した場合は,その影響が大きく,結果として過剰な予備設備が必要になるが,分散型の各種電力供給システムを組合わせることで,自然に予備系が作られ,コジェネのような高効率システム構成も容易になるのではないだろうか.電力会社は,そのような省エネインフラや省エネ技術の提供を,次世代のエネルギー供給戦略の重要点と位置づけるべきだし,国も積極的に支援すべきである.

 

最近,地球に優しいというオール電化の住宅が売り出されているが,夜間電力を使う点はよいにしても,停電時にすべてのエネルギー源を失うことを考えるとどうなのか考えてしまう.更に,家では快適でも,発電時の効率が50%以下であり,発電に伴って大気汚染,二酸化炭素,あるいは放射性廃棄物を生み出すことを考えると,「低級」な熱源でよい暖房なども全て電気でまかなうのは,決してエコロジカルではないと思う.電力会社は,「電気」を売らなければならない,と思うのではなく,省エネも含め,「エネルギー」を売る会社に変わるべきではないだろうか.そうすれば,各種用途に最適のエネルギー源を組合わせ,災害にも強いトータルエネルギーシステムを装備した家を売り出せるのではないだろうか.最後にもうひとつ.エネルギーの浪費を抑えることは,けちでも消極的でもなく,「未来世代への責任だ」という社会のコンセンサスが原点であろう.