エレクトロニクスセミナーA
2000.4.21 (5.2改訂)
WWWブラウザの操作
基本的なコマンドの学習
便利な機能
エディタの練習
World Wide Webという言葉が一般に広まって5年以上が経過したが、今では、パソコンはWWWを見るためのものという捕らえ方もされるようになった。マイクロソフト社がOSとブラウザを一体化したために独占禁止法により司法省に訴えられているが、それほどまでにブラウザが重要なアプリケーションになったということである。
ブラウズ (browse)とは本を拾い読みしたりものをざっと眺めたりするという英語の動詞であり、Netscape Navigator や Internet ExplorerのようなアプリケーションをWWWブラウザと呼ぶ。ちなみにインターネット (The Internet) とは各地に構築されているLAN(小規模ネットワーク)やWAN(大規模ネットワーク)を接続したものでネットの間を結ぶものであるので、インターネットと呼ばれている。決して、WWWだけがインターネットでは無いことに注意すること。「インターネットを見る」とはそのような接続機器を見ることであり、WWWを見るのとは異なっている。「インターネットする」などという言葉などは言語道断である。
さて、マイクロソフト社がLinux用のアプリケーションをリリースしないので現在Linuxで使用されるブラウザはNetscape Navigatorが中心であり、テキストベースで利用できるlynxやエディタの中に表示できるw3cなどが適宜使われる。本システムにはNetscape Navigator を機能の一つとして含む Netscape Communicator と lynx がインストールされているので必要に応じて使い分けることが出来るが、授業ではグラフィックの表示を考慮してNetscape Navigatorの使用を前提とする。
起動は、ランチャーのNのマークのボタンを押すか、xtermやktermの中から
$ netscape &
で行う。それ以後は、教科書のp.234の8-3から詳しく紹介されているので、それに従って操作を行う。初めて起動するときには、使用許諾を了承するかの質問が表示されるので、受け入れるのならばOKボタンを押す。なお、Xの画面に入りきらないときには、ウィンドウの上部のバーをクリックしたままマウスを移動させる「ドラッグ」という操作でウィンドウの位置を動かすことができる。また、ウィンドウの右下の角をドラッグすることによりウィンドウのサイズも変更できる。ボタンが画面の下に隠れている場合には、ランチャーボタンの中で4つの画面を切り替えるボタンがあるので、それにより下の画面をクリックして選択し、作業を行うことも出来る。メニューバーにある最大化ボタンによりウィンドウを適切な大きさに変更することも出来る。
インストールされているNetscape Navigatorは日本語化が完全ではないので、起動時には日本語の表示ができない。そこで、メニューバーのViewからEncodingを選択し、Japanese (Auto-Detect) の項を選択すると、日本語が表示できるようになる。以後は、同じメニューの中のSet Default Encodingを選択することにより起動時から日本語の表示が可能となる。
セットアップが完了したら、
http://www.ecs.shimane-u.ac.jp/~nawate/
を入力してこのwebテキストを自分の端末に表示させて以下の作業を行う。
UNIX系のOSの特徴はコマンド(作業命令の名前)操作により大半の作業が行えることである。GUIを利用したOSにおいては、メニューバーをクリックすることにより各種の可能な操作が行えるため、コマンドを覚えなくても適当に探して実行させることが出来るが、UNIXのようなコマンドベースではコマンドの名前や利用方法を知らないと簡単な操作すら実行できなくなる。また、キー入力の回数が多くなるので、キーボードに慣れていないと作業効率が悪い。
そのようなコマンドベースの操作がUNIXの敷居が高いと批判される由縁であり、XによるGUIアプリケーションの開発が多く進んできたのも、ユーザに使いやすい環境を提供するためであった。しかし、一通り、必要なコマンドを覚え、使用するアプリケーションが固定してくると、ちょっとした操作や設定を行うためだけにXを起動したり、GUI環境からマウスで選択して行く形式は無駄が多いことに気付く。結局は、適材適所、是々非々でそれぞれ使いやすい環境で各種の作業を行うのが一番効率が良いことが理解できるようになるはずである。
しかし、本講義の受講者の大半がパソコン自体に関しても初心者でであるので、やはり、GUI的な操作が重宝するであろうし、コマンドは頻繁に使用したとしても覚えるのには時間がかかる。よって、「情報科学概論」 の中で説明したように今後も作業は、まず、startxコマンドによりXを起動した後に行う。その際に、日本語の表示を考えると、常に最低一つはktermを立ち上げている方が便利である。
本日のコマンド学習もXを起動した後、ktermを立ち上げてその中からコマンドを利用する形式で行う。
その他にも基本的なコマンドが多数存在しているが、次週以降順次紹介して行く。
現在の自分のいる状況を把握するためのコマンドがやはり基本であるので初めはそこから始める。「情報科学概論」で紹介したようにコマンドの操作方法はmanにより詳しく説明されるので、一つずつ、manで確認しながら進めて行く。
lsはファイルを表示するコマンドで引数としてディレクトリやファイル名を取ることができる。また、種々のオプションが用意されている。オプションや引数無しで起動すると、現在いるディレクトリ(カレントディレクトリ)のファイル名を表示するが、.(ピリオド)で始まるドットファイルと呼ばれる設定関連のファイルは表示されない。
ログイン後にどこにも移動していなければ自分のホームディレクトリの絶対パスが返ってくる。
よくある例としては、日本語のファイル名をもつファイルなどは日本語表示ができない環境は??????のような名前として表示されることがあるが、このファイルを消そうとして
rm ??????
を行ったとすれば、6文字のファイル名を持つファイルをすべて消してしまうことになるので、ファイル名に日本語を使わないことも大切なポイントである。
$ ps ax
のようにオプションをつけて実行する。
ログインしたときにコマンドを受け付ける環境はbashというシェルと呼ばれるもので提供されている。シェルはユーザからのコマンドを解釈してOSに渡し、OSからの反応をユーザに向けて表示する機能を担っている。bashは比較的高機能なシェルであり、ユーザの操作を支援する機能をいろいろと持っているが代表的なものの一つがヒストリと呼ばれるコマンド履歴である。
実際に、$(プロンプト)が表示されている状態で、↑キーを押すと、前回入力したコマンドが表示される。Enterキーを押すと、そのままコマンドを実行できる。↑キーを押すたびに一つ前のコマンドを表示して行く。↓では一つ後のコマンドが表示される。
補完とはユーザの入力しょうとする文字列を推測して補ってくれる機能であり、キー入力の量を減らすことに貢献する。試しに、bashの設定ファイルの一つである.bash_historyを表示することを行う。
$ cat .bas
まで入力した段階でキーボードのTABキーを押してみる。TABキーは右向きの矢印がキートップに表示されている(→|)キーである。結果はどうなったであろうか? hが補われて
$ cat .bash
へとコマンド行の表示が変化したはずである。さらに、TABキーを押しても何も起こらない。それは、.bashで始まるファイルが複数あるため、それ以上の文字列を補うことができないからである。TABキーを二度押すと、.bashで始まるファイルの一覧が表示される。そこで、さらに、_hを入力してTABキーを押すと最後まで補完されるので、Enterキーを押すことによりコマンドが実行される。
実際の利用はcpやmvコマンドを実行する際に、目的のファイルが本当に存在するか確認するのにこの補完機能は役立つ。また、ソフトウェアの追加インストールなどネットワーク上から持ってきたファイルは通常は圧縮されておりバージョン表記などもファイル名に含まれるのでかなり長いものになる。そのようなときは、一文字間違えてもコマンドのエラーになるので、補完機能を有効に使ってファイル名を補完する方が間違いが少ない。
プログラミングや文書作成において、基本的に、作業のために使用するのはテキストエディタである。テキストエディタ(単にエディタとも言う)とは、文字を入力編集するためのアプリケーションであり、ワープロと異なるのは文書整形機能を持たないことである。ワープロでは文字のフォントや大きさ、装飾が選べたり行揃えや段落設定など見栄えをよくするための機能が豊富であるが、エディタにはそのような機能は無くただ単に文字を入力し、編集するだけである。その分、動作が軽く、また、作成した文書がOSやプラットフォームに依存しないテキスト形式であるので互換性にも勝れている。
Linuxのエディタはviとemacsが双璧であり、それぞれ愛好者が多い。好みの問題であるので、どちらがいいとは言えないが、viは動作が軽いのでちょっとした設定ファイルの修正などには便利である。また、ほぼ全ての環境であらかじめインストールされているので、どこでも使用できる。
一方emacsはエディタというよりも統合環境と呼ぶ方がふさわしく、文書の入力にとどまらず、電子メールやネットニュース、デバッグなどのモードがあるだけでなく、HTML文書やTeX文書の入力を支援する機能も追加できるので、多くの作業において効率を上げることが可能である。
本講義においては、後の電子メールの利用も視野に入れてemacsの操作を学習してくが、のちほど、viに関しても紹介だけは行う予定である。また、emacsにはコンソールでも動作する基本的なemacsに加えてXでの使用を前提にメニューやボタン機能を拡充したxemacsという亜流も存在する。こちらも好みに応じて選択できるが、初めのうちはxemacsを使用することとする。
基本的な操作は教科書のp.3から書かれているのとほぼ同じであるが、起動コマンドは
$ xemacs &
である。また、emacsとすると、教科書のmuleと同じものが起動する。ランチャーバーにあるEditorボタンによってもemacsの方が起動する。
日本語を入力するためには、まず、コントロールキーと¥キーを同時に押す。このような操作を以後は
C - \
と記述する。すると、ウィンドウ最下部のミニバッファと呼ばれるところに
Input method:
と聞かれるので、
japanese-canna
と入力する。上で行った補完が使えるので、japa程度まで入れてTABキーを押し、canくらいまででまた補完すると入力が楽である。
『かんな』を初期化しています...doneが
表示されたら準備が出来ており、モードラインの左端に[あ]が表示されたはずである。この状態になればテキストのp.10からの作業が行える。
自分で作業を行ってみないとなかなか慣れないのだが、「情報科学概論」の方でもxemacsを利用するので、しばらくすると重要なコマンド自体は覚えられるようになるはずである。
ただし、このxemacsは上のメニューやボタンの機能がただのemacsよりも充実しているので、マウスによる操作でもかなりのことが行える。コマンドによるものとマウスによる操作とどちらが効率が良いかは、個人の習熟度に依存するのでしばらくは自分の好みの方法で行えばよい。このテキストではコマンドベースで記述するが、必要に応じてボタンの方も紹介することとする。