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磁石の歴史

歴史家による磁石の発見の記述は,その時代があまりに古いため正確な年代まで は確定されていないようです.鉄を引き付ける力に驚き,不思議な石として注目 された背景には,先ずは,鉄の生産が先にあったことになります.鉄は,古く, 現在のトルコのある辺り,ヒッタイト文明により日常的に使われるようになった と言われています.大体,紀元前700年かそれ以上前です.

磁石の歴史は3000年と言いますから,まだ,人類が鉄を生産すると言うよりも, 鉄を含む鉱石を利用していた時代から知られていたと言うことになりそうです. 中国で,鉄製のものを引き付ける不思議な石は,母親が子供を抱くようにやさし く慈しむ様に例えられ,「慈石」と名付けられました.また,その石が出土する 地域は,慈州と呼ばれることになりました.(当時は慈県)

春秋戦国時代は紀元前700年から200年ころですが,その時分には磁石を利用した 「指南車」という方位磁石が使われていたようです.当時は,司南と書いたよう ですが,現在のような針を持つ形状ではなく,ラーメンの汁をすくう,蓮華のよ うな形のものが利用されていたそうです.

一方,地中海のクレタ島では紀元前600年頃,羊飼いが杖の先の鉄を引き付ける 石を発見していたようです.当時のギリシャではlodestone (loadstone)と呼ばれ ていました.この石は,マケドニアのMagnesia地方や,トルコのある小アジア, イオニア地方のやはりMagnesiaというところで良く採れたので,磁石のことをだ んだんとMagnetと言うようになりました.今,英語でmagneticと言うと,「磁気 の」と言う意味に加えて,「人を引き付ける,魅力的な」という意味が加わって います.磁石がものを引き付ける様子から派生した意味ですが,中国と同じく磁 石は魅力的なものとしてとらえられていたのでしょう.

日本ではどうかと言うと,和銅6年(713年)の続日本記にある「近江の国より慈石 を献ず」という記述が最初のようです.中国から技術を次々に取り込み始めた奈 良時代に磁石も海を渡って伝わったようです.その後,だいぶたった1700年代, 貝原益軒の大和本草に外国からたくさん輸入されるようになった記述が登場しま す.また,奥州南部藩大槌村から大きな磁鉄鉱が産出されたのも江戸時代です. その地は現在は釜石市として知られています.

ヨーロッパのその後は,マルコポーロが中国の方位磁石をヨーロッパに伝え,羅 針盤として広く普及し,大航海時代を支えました.そして,科学技術の発展が目 覚しかった近世ヨーロッパで,物理学者達によって不思議な磁石の秘密が次々と 明らかになって行きます.18世紀,ファラデーは電磁誘導の法則を見出し,マク スウェルによって電気と磁気の関係を記述する物理学である電磁気学が完成しま す.1900年代は,天才たちによる固体物理学の世紀でした.その中で磁性物理も たくさんの科学者によって研究され,1950台に大体の基礎が確立しました.

今日,磁性材料の利用は非常に多岐にわたっていますが,その種類としては,力 を利用するもの,磁気と電気の相互作用を利用するもの,磁気の持つ情報の蓄積 能力を利用するものに分類できます.詳細については後でまた説明することにし ましょう.



平成15年8月19日