研究内容
       機能システム化デバイスの研究
  エレクトロニクス技術は,高度情報化社会の構築に必須の技術分野となっています.その 技術の根幹をなす半導体デバイスは,インターネットやパーソナル携帯機器の爆発的普及を支え,今後,より高度なシステム実現に向けて飛躍的な高性能化・高機能化が要請されています.さらに将来的には,システム・オン・チップ,ワイヤレス,ウエアラブル携帯機器などに代表されるように,デバイスの多機能集積化・システム化が急速に進展するものと予想されます.このような状況から,情報信号の送受信,演算,記憶,表示,伝送など種々の機能を発現・構成・集積化できる新しい材料・デバイスの創製が強く望まれています.そこで,本研究室では,種々の機能を集積化したシステムの実現を可能にする半導体デバイスの研究を行っています.


ナノ構造界面のアトミスティック電子物性の研究

  電子デバイスのナノスケール化・原子スケール化に伴いデバイス内には多様な界面が接近し,界面物性のデバイス特性への影響(擾乱)が急激に増大すると考えられます.しかし,ナノ構造界面の原子スケールの(アトミスティック)電子物性は未知の部分が多く,存在する電子捕獲中心(トラップ)の正確な数の評価も困難な現状です.そこで,これまでのようにトラップを”密度”で表すマクロ的な扱いから脱却し,ナノ構造界面におけるトラップを1個1個検出して個々の電子物性をキャラクタリゼーションすることを行っています.このような究極的なことの実施を可能にする先駆的なアトミスティック電子物性評価技術の開発も行っています.

 最近の成果:
T. Tsuchiya and Y. Ono, "Charge pumping current from single Si/SiO2 interface traps: Direct observation of Pb centers and fundamental trap-counting by the charge pumping method," Jpn. J. Appl. Phys. vol. 54, 04DC01 (2015).
 チャージポンピング(CP)法は微細MOSFETでもSi/SiO2界面トラップを高精度評価できる方法として知られ,ここ30年来広く用いられている.我々は,単一界面トラップからのCP電流を体系的に測定評価し,その最大電流値(ICPMAX)が0<ICPMAX≤2fqfはゲートパルス周波数,qは電子電荷)の範囲の様々な値を示すことをはじめて明らかにした.この結果は,トラップ1個当たり2つの電子準位を有していることを意味し,Si/SiO2界面のダングリングボンドであるPb0センターの電気的性質と一致する.概算したトラップ密度分布も,報告されているPb0センター密度分布の概略とほぼ対応している.したがって,従来のCP理論では,トラップ1個当たりのCP電流がfqであることを前提にしているが,これが根本的に誤りであることを実証したことになる.また,CP法で単一のPb0センターの直接観測・評価にはじめて成功したと言える.さらに,CP電流に対するゲートパルスのオン時間やオフ時間等の依存性を利用し,トラップ間相互作用も考慮した,CP法による真のトラップ数カウンティング法を確立した.
 この論文は,第38回(2016年度)応用物理学会優秀論文賞を受賞した.


SOI (Silicon on Insulator)デバイス,TFT (Thin Film Transistor)デバイスの研究

  低寄生容量化と低閾値電圧化により低電圧動作が可能であり,将来のシステムLSIデバイスとして有望なSOI CMOSデバイスについて,そのデバイス物理や低消費電力・高速化の研究を行っています.また,システム・オン・パネル,あるいは,システムLCD (Liquid Crystal Display) と言われるように,電子ペーパーや有機LED (Light Emitting Diode) なども含めて,人間とのインターフェースとして重要な表示部と一体化した種々携帯システムなどの実現が可能かもしれません.そのような機能を実現させるためのキーデバイスとなるTFTの高性能化・高信頼性化のためのデバイス物理・設計の研究を行っています.


SiGe/Siヘテロ構造を導入した低エネルギー超高速CMOSデバイスの研究
             =従来型シリコン集積回路のブレークスルー=

  Siプロセスとの親和性が良いSiGeを用いて,SiGe/Siヘテロ構造の導入などにより,微細化Siデバイスの限界を打破する低エネルギー高速動作CMOSデバイスの研究を行っています.デバイス構造,Siデバイスにおけるエネルギーバンドエンジニアリング,SiGe/Si界面特性,デバイス信頼性,デバイス評価法の研究に重点を置いています.


Siナノメートル構造デバイスの研究

  情報・通信システムに変革を与え得る新方式・新原理による機能融合デバイスの創出を目指した探索的研究を行っています.



  産学官との連携 

  産業界や他大学との連携を重視して研究を進めています.各々の得意領域で能力を発揮し,相乗効果によってより大きな研究成果を創出して社会貢献することを目指しています.以下は具体的な連携内容です.

(株)半導体理工学研究センター(STARC):ナノCMOSデバイスの界面物性揺らぎ評価技術の開発とRTNの機構解明に関する研究(2010-2012)

(株)液晶先端技術開発センター(ALTEDEC):TFTの高性能化に関する研究(2002-2007)

シャープ(株):ポリシリコンTFTデバイスの動作解析に関する研究(2006-2008)

(株)富士通研究所:TFTデバイス物理の研究(2001-2004)

(株)ルネサステクノロジ:微細MOSFETの界面特性の研究(2006-2009)
(株)ルネサステクノロジ:新構造デバイスの信頼性技術の研究(2004-2005)
(株)ルネサステクノロジ:SOIデバイスの信頼性に関する研究(2003)
(株)日立製作所 半導体グループ:SOIデバイス信頼性に関する研究(2000-2002)

ソニー(株):MEMS素子に関する研究(2002-2004 )
ソニー(株) :低誘電率絶縁体材料のCMOSデバイスに与える影響に関する研究(2000)

セイコー・エプソン(株):SOIデバイスに関する研究(2003)

NTT:MEMSプロセスに起因するMOSトランジスタ等の動作解析(2004)
NTT:SOIデバイスに関する研究(1999-2000, 2002)


松江松下電器(株):積層型フィルムチップコンデンサに関する研究(2001)
松江松下電器(株):有機半導体に関する研究(2001)


東北大学:SiGe/Siヘテロ構造を導入した非古典的CMOSデバイスに関する研究(1998-2009)
東北大学:極薄膜ヘテロエピタキシャル層の電気的特性に関する研究(2011)

広島大学:立体ナノSOI MOSデバイスの研究(2004)

静岡大学:シリコンナノデバイスにおける複合欠陥の物理と応用(2014-2015 )
静岡大学:Siナノメートル構造デバイスに関する研究(1998-2001)

経済産業省「即効的・革新的エネルギー環境技術研究開発制度」の一環として,NEDOを通じて行っているSOIに関する産官学の国家プロジェクト「極低電力情報端末用LSI研究開発」の推進委員会委員(1998-2002)



    取得した主な研究費補助金
科学研究費 基盤研究(B) No.226289105(研究代表者)(2014-2016)
   「単一トラップの分離検出・電子物性評価技術の開発とトラップ物理の新展開」

科学研究費 挑戦的萌芽研究 No.15K13970(研究分担者)(2015-2016)
   「高感度チャージポンピング・スピン共鳴法の開発と電子対再結合のスピン制御」

科学研究費 基盤研究(B) No.25289098(研究分担者)(2013-2015)
   「シリコン中のドーパント原子を用いた高精度電荷制御の研究」

科学研究費 特定領域研究 No.18063016(研究代表者)(2006-2009)
   「ナノスケールデバイスにおける界面物性揺らぎと雑音」


科学研究費 基盤研究(B) No.18360174(研究代表者)(2006-2008)
   「非古典的ナノヘテロデバイス実現のためのヘテロ界面に関する先駆的基盤研究」


科学研究費 基盤研究(A) No.20241036(研究分担者)(2008-2012)
   「シリコン・シングルドーパント・エレクトロニクス」

文部省科学研究費 基盤研究(B) No.11450142(研究代表者)(1999-2001)
   「SiGeとSOIを駆使した超低消費電力極微細Si系CMOSデバイス構成法の研究」

文部省科学研究費 萌芽的研究 No.11875081(研究代表者)(1999)
   「Ⅳ族半導体ヘテロ構造におけるホットキャリアの挙動に関する研究」

文部省科学研究費 特定領域研究(B) No.11232201(研究分担者)(1999-2003)
   「人工IV族半導体の物性制御と超高速光電子デバイスへの応用」


東北大学電気通信研究所共同プロジェクト研究(研究代表者)(2011)
   「極薄膜ヘテロエピタキシャル層の電気的特性に及ぼすヘテロ界面の影響に関する研究」

東北大学電気通信研究所共同プロジェクト研究(研究代表者)(2009)
   「IV族系ヘテロデバイスの高性能・高信頼化のためのヘテロ界面に関する研究」


東北大学電気通信研究所共同プロジェクト研究(研究代表者)(2006-2008)
   「ノンクラシカルIV族ヘテロ構造デバイスの高性能・高信頼化の研究」

(財)電気通信普及財団助成金(研究代表者)(1998)

(財)日本証券奨学財団助成金(研究代表者)(1998)

(財)中国電力技術研究財団助成金(研究代表者)(1998)



    主な実験装置
[測定評価装置]
    高精度電流電圧測定システム
    高精度LCR測定器
    ホットキャリア効果測定システム
    チャージポンピング測定システム
    低周波雑音測定システム
    RTN評価システム
    
雑音指数アナライザ
    パルス電流電圧測定系
    高精度インピーダンスアナライザ
    分光照射装置
    SEMなど

[プローバシステム]
    極低温プローバ
    高温プローバ
    シールディングマニュアルプローバなど

[シミュレータ]
    二次元デバイスシミュレータ
    二次元プロセスシミュレータ
    アナログ回路シミュレータ






神魂神社
(国宝.日本最古の大社造りの建物)