物性発現機構の探求

[2-1] Siナノ薄膜の量子閉じこめ準位に対する表面O終端効果の解明

(Surf. Sci. 357-358, 312 (1996))

表面をO終端したSi(001)ナノ薄膜の量子閉じこめ準位を第一原理計算によって計算し、表面をH終端した場合と比較した。量子閉じこめ準位のバンドギャップに注目すると、O終端した方がH終端よりも数%から50%前後大きなバンドギャップを示し、O終端の方が量子閉じこめ効果が強いことを明らかにした。


[2-2] Siナノ構造からの界面発光の起源の解明

(Surf. Sci. 380, 61 (1997))

表面をSi酸化膜で覆ったSi微粒子からの発光特性は、微粒子のサイズの減少と共にブルーシフトするが、あるエネルギー以上にはならず飽和してしまうことが知られていた。この機構は金光らの三領域モデルで説明され、界面領域の発光準位の存在が飽和値に対応するとされていたが、鍵となる界面領域の発光準位の起源は未解明であった。我々はSi/Si酸化膜界面に現れるであろう原子構造を第一原理計算で検討し、Oと二重結合を形成した界面Siが発光準位の起源であることを解明した。


[2-3] Si酸化物/Si界面のバンドオフセットの界面構造による影響の解明

(Surf. Sci. 407, 133 (1998))

Si酸化物/Si(001)界面のバンドオフセットに対する、界面欠陥の影響を第一原理計算によって検討した。界面のSi-H結合はほとんどバンドオフセットを変えないが、Si-OH結合は1eV以上バンドオフセットを大きくする。これらの効果は界面に形成される二重極子の効果によって説明可能である。


[2-4] Mnシリサイドナノ構造磁性の解明

(Jpn. J. Appl. Phys. 47, 4487 (2008); Phys. Rev. B 78, 045307 (2008) 等)

Si中MnSi微粒子の示す磁性のサイズ依存性とその起源

ダイヤモンド・金属接合におけるショットキー障壁高さと水素終端の関係

Si中に作成したシリサイド半導体のナノ微粒子が強磁性を示すこと、硬磁性成分と軟磁性成分からなることを実験的に発見。第一原理計算によってその起源を検討し、Mnシリサイドでは、キャリアドーピングや組成変化によってフェルミエネルギーが変化し磁性が発現する可能性があること、歪み効果がその磁性の発現を助けることを明らかにした。そして、硬磁性成分が歪んだナノ微粒子のバルク部分から、軟磁性部分が微粒子の表面部分から発現することを解明した。


[2-5] ダイヤモンド金属界面の電気特性

(Jpn. J. Appl. Phys 48, 111602 (2009))

金属を積層して接合を作る前にダイヤモンド表面をH終端処理しておくと、金属の仕事関数に応じてショットキー障壁高さが変化する、接合の作り分けできること、逆にH終端処理を行わないとそれができないこと、が実験的に知られているがその起源は明らかではない。そこで、第一原理計算に基づいて検討。H終端処理が、界面でのダイヤモンドを構成するC原子と金属原子との間の化学結合形成を抑制すること、界面準位密度を低下させること、ダイヤモンドと金属の密着度を緩和すること、の三つの効果を引き起こし、そのためショットキー障壁高さが金属の仕事関数に応じて変化するという仕組みを明らかにした。


[2-6] Siナノ構造の誘電特性の解明

(Appl. Phys. Lett. 96, 193102 (2010))

物質の誘電率は、電子誘電率と格子誘電率の和である。中でも電子誘電率は、構造のナノスケール化に伴って減少することが報告されている。そこで、格子誘電率からの寄与を考慮しなくて良いSiのナノ薄膜について、薄膜の帯電への応答としての電子誘電率のサイズ効果をEFED法([3-3]参照)に基づいて第一原理計算で検討した。帯電による誘電率は、薄膜の膜厚の減少と共に減少するが、影島-白石法([3-2]参照)で求めた光学誘電率よりも小さな値を示し、しかも正に帯電するか負に帯電するかによっても異なり、また膜厚に対して単調ではない変化を示した。そして、これらの結果が、薄膜表面と薄膜中央での局所誘電率の変化によって引き起こされていることを明らかにした。


[2-7] グラフェンの物性の解明

(Jpn. J. Appl. Phys. 49, 100207 (2010); Appl. Phys. Express 3, 075102 (2010); Appl. Phys. Express 3, 115103 (2010); Phys. Rev. B 84, 115458-1-5 (2011). 等)

グラフェンの熱電特性を理論的に検討し、熱電能が電荷中性点近傍で発散すること、キャリア散乱源を抑制して移動度を高めることで実用レベルの高い熱電変換性能指数を示すことを明らかにした。また、SiC(0001)上にグラフェン島を形成すると、その形状は表面に乗ったものではなく、表面に埋め込まれたものとなること、そしてそのエッジがジグザグ型を持つ場合には電界を加えて帯電した時に磁性を発現する、電気磁気効果を示すことを明らかにした。

また、SiC上グラフェンの量子ホール効果を世界で始めて測定に成功するなど、様々なグラフェンの伝導特性の解析を理論面で協力。この業績で筆頭著者が、2012年度応用物理学会論文賞奨励賞を受賞することを支援している。


[2-8] Si系ナノキャパシタ特性の解明

(Phys. Rev. B 85, 205304 (2012))

極板にSi一層の薄膜である平面ポリシランを用い、ナノスケールの極板間隔を持ったナノキャパシタの電気特性をEFED法([3-3]参照)に基づいて第一原理計算を用いて検討した。このようなナノキャパシタでは、量子キャパシタンスと誘電分極効果の2種類の非古典的効果が現れることが、知られている。平面ポリシラン極板の場合は、量子キャパシタンスの効果の方が1桁、誘電分極効果よりも大きいことを明らかにした。


[2-9] Pdナノ構造による磁性発現

(J. Appl. Phys. 112, 073910 (2012); Phys. Rev. B 90, 054411 (2014))

一般に磁性金属はナノ構造化にすると保持力を失い磁性が現れなくなるが、バルクで非磁性の金属であるPdでは、ナノ構造化することによって逆に磁性が現れる。このようなPdナノ構造における磁性発現機構を理論的に検討し、量子閉じこめによるフェルミ準位近傍の状態密度の変調に起源があり、顕著なサイズ依存性を示す理論的に予言した。そして、電気的にフェルミ準位を動かすことが出来れば、磁性を制御できる可能性もあることを理論的に予言した。その後実験によって、確かに磁性の顕著なサイズ依存性があることを明らかにし、現在電気的な磁性制御の可能性を探究している。