8.a. Tgif (ドロー)

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作画のためのアプリケーションは大きく分けて「ドロー」系と「ペイント」系に分 けられます。1984年にMacintoshが発表されたときに、すでにMacPaintという優秀 なペイントソフトがプリインストールされていましたが、その後、MacDrawという ドローソフトが使用されるようになり、ドローやペイントという言葉はその当時か ら始まったようです。

ドロー系のアプリケーションの特徴は、円や四角、線などの図形をオブジェクトと して認識し、それらの図形をあとから随時変形や拡大縮小、回転、移動などを行っ て変更できることです。図8-1に代表的なオブジェクトの例を示します。

図8-1 ドローにより作画した例

設計図や組織図、回路図などの特定の図形の集合からなる絵の作成に適しています が、かなり複雑なデザインを持つ絵画のように見える絵でもドロー機能により作成 されている場合があります。ドロー機能により作成したオブジェクト(図8-1)が その後各種の操作を受けて変更可能である様子を図8-2に示します。

図8-2 ドロー機能による変形の例

一方、ペイント系のアプリケーションでは鉛筆や筆で絵を描くように作画でき、ま た、一見ドローのような四角や丸などの図形を入力することも出来ます。(図8-3)

図8-3 ペイント機能により作画した例

しかし、ドローと異なるのは記録の単位がオブジェクトではなく一つ一つのドット であることで、変形や回転などを後から行うことは出来ません。ただ、任意の領域 を選択し、その領域内に含まれる全ての情報を移動することは図8-4に示すように可 能です。

図8-4 ペイントソフトの編集例

Linuxで利用可能なドロー系のアプリケーションの代表例がTgifです。古くから UNIX上で使用され、TeXに図を張り付ける際にも、また、グラフを整形する際など にも使用されてきました。ただし、その他のOS上のドローソフトとはユーザインター フェイスが異なり、また、あまり洗練されていないので使いにくい操作感であるこ とも確かです。ですが、事実上の標準ソフトなのでLinuxを使うのであれば覚えて おいて損はありません。

ここではとりあえず体験してみる程度として、操作方法は詳しくは紹介しませんが、 基本はオブジェクトの作成とオブジェクトの選択、変形などの手順に慣れることで すから、Windowsなどの環境で使用した経験があれば見よう見まねでも多少の操作 は可能です。GNOMEメニューの「グラフィック」の中から起動できますので、試しに立 ち上げてみましょう。とりあえず、メニューは日本語化されていますので、順に見 ていくと、どのような操作があるのか分かってきます。メニューバーの下の操作領 域が、独特のインターフェイスになっていて、アイコンにマウスポインタを当てて 中クリックするとそこで選択できるものの一覧が表示されますが、右クリックや左 クリックでは、それら項目を順に移動して選択するだけです。ですので、マウスの 中クリックを多用することになりますので、その感覚にも慣れて おく必要があります。

もう一つ特徴的なことは、直線ツールが独立には無くて、折れ線ツールの機能の一部 になっている点です。縦に並んだメニューの中から折れ線ツールを選択して、最初に直線を引いたら右クリック してそこで作業を中断すると直線が描けます。

メニューに表示される言葉も一部なじみが薄いものがあると思い ますが、それも実際に作業してみて体(指?)で覚えていくのが一番です。

ただ、基本的にいわゆるパソコンのドローツールと異なるのは、「印刷」機能が無 いことです。「ファイル」メニューには「印刷」というのがありますが、これは、 epsというLaTeXで文書を扱うときに取り込む形式に変換するだけの項目です。 UNIXやMacintoshでは美しい印刷出力を得るためにPostScriptというAdobe社の開発 した形式を使用しますが、そのための変換を行うのがここの「印刷」です。

ですので、Tgifで作成した図をプリンタに出力するためには、他のアプリケーショ ンに取り込んでから行うか、保存した後コマンドにより行う必要があります。


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