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磁気の基礎

磁性材料と呼ばれる材料は,基本的に金属・合金が中心ですが,それらは原子1 つひとつが小さな磁石のようになっています.永久磁石はそれら原子のNS極が全 て並行に揃っていてしかも向きが変化しないと言う特殊な材料です.通常の磁性 材料は外部から磁界が加わると,その磁界の大きさにしたがって向きを変えます. ただし,多少の磁界が加わってもすぐに向きを変えないような材料があり,これ らが磁気記録として使われます.キャッシュカードやテープレコーダ,ビデオレ コーダ,ハードディスク,フロッピーディスク,MOやMDなど情報を蓄えるために 様々な種類の磁気記録材料が使用されています.(図2)

図 2: ハードディスクの記録状態
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そのようにエレクトロニクスを支えている磁性材料ですが,今日扱うのは単純な 永久磁石です.永久磁石について良く知られていることをまとめてみましょう.

  1. N極とS極があり,同種の極は引き合い,多種の極は反発する
  2. 鉄を引き付ける
  3. バランスを取ってつり下げるとN極が北を指す
  4. 磁石を途中で切断してもN極とS極を分けることはできない.切り口にま た磁極ができ,必ずNとSのペアで存在する.(図3)
  5. 磁力線には始まりも終わりもない.(図1)

図 3: 磁石の分割
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上のうち,4番と5番は現在の電磁気学の基本公式でもあり,非常に重要な性質で すが,あくまで経験則です.この広い宇宙にはどこかにN極だけやS極だけが存在 している可能性があると指摘する物理学者もいます.が,現在ではそのような 「単極」は見つかっていないので上記は成り立っていると考えて間違いありませ ん.

1の引力や反発力を利用して実用化された基本的な道具にモーターがあります. モーターの原理は図4のようなものです.スイッチを入れて電流が流 れ始めると中心にあるコイルに電流が流れ,外側の永久磁石の同種の極と反発し て回ります.半回転すると,電流の極性が切り替わり電磁石の極性が反転し,や はり反発力が働くのでまた回転します.この連続で連続回転が得られます.中心 の電磁石はどれだけ回っても常に反発力を受けてしまうかわいそうな存在です.

図 4: モーターの原理図
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これを回転ではなく,一直線上に並べたものを「リニアモーター」といいます. 夢の超特急として知られるあのリニアです.リニアとは直線と言う意味ですね.

電流が流れることによりどっちつかずのかわいそうな存在になるものは他にも古 くから使われて来ました.ベルやブザーです.この原理は図5のような ものです.

図 5: ベルの原理図
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平成15年8月19日