量子力学と統計力学

量子力学と統計力学は、高校では習っていない、大学で初めて習う、もっとも大学らしい科目です。高校までに習うニュートン力学や熱力学、波動力学、電磁気学は古典力学と呼ばれるのに対し、量子力学、統計力学は現代力学とも呼ばれており、今日の様々な学問や技術の基礎となっているとても大事なものです。

・量子力学とは

物質は、原子でできています。そして、原子は電子と原子核でできています。原子核に比べて電子は1000倍以上軽いため、物質の中を動き回る電子の運動が物質の性質を決めています。

電子はとても軽く (アボガドロ数個集めても1万分の5グラムしかありません)、加わっている力と初速が分かってもニュートン力学を使って位置の予測をすることができません。電子のように質量がとても軽いものの運動を説明するのが量子力学です。

(陽子や中性子、光も量子力学の知識がないと理解できません。)

電子は波と粒子の性質を兼ね備えて運動し、とてもふにゃふにゃした雲のような広がりを持っていて、その広がった部分は波として振動しています。電子の大きさは温度や運動量で決まり、一瞬にして無限の大きさになったり、逆に無限に小さい点になったりします。重心の運動は古典力学で説明できますが、ある種の内部運動のような波の部分の運動はそういうわけにはいきません。そこで、波動関数とシュレディンガー方程式を使って運動を予測します。

電子は広がりを持っていますが、観測すると点になり、しかもどこに見つかるかは全くランダム。どこで見つかる確率が高いかだけが予測できます。電子の広がりは様々に波打ち、他の電子とも重なることが出来ます。そして電子は壁があっても波として通過してしまうことも出来ます。

量子力学は一見不思議に見えますが、重い物質では自然とニュートン力学と一致するため、何ら奇妙なものではありません。硬さや柔らかさ、電気の流れやすさなどの、物質の性質の成り立ちを理解するのに欠かせません。

・統計力学とは

物質は、アボガドロ数個(およそ10の24乗個、1兆個の1兆倍)の原子で構成されています。そしてそれぞれの原子は、一つの原子核と数個から数十個の電子から構成されています。こうした大規模な集団の運動を、確率統計の知識で理解するのが、統計力学です。

熱力学で習うエントロピーは、確率統計の知識を使うと、 大規模集団の運動の乱雑さと等価です。そして熱や温度という概念は、量子力学で学ぶ運動やエネルギーという概念と密接につながっています。沢山の電子や原子でできた物質の性質を理解し、相転移や化学反応、電気伝導を制御するのに欠かせません。

参考ノート:ryousiron-utf8.pdf