電子素子材料としてのグラフェンと問題点

従来集積回路(ULSI)に使われてきたシリコンは微細化の限界に近づき、新しい材料の可能性が求められています。

グラフェンの移動度は室温で15000cm2/Vsと大変高い値を示します。シリコンの室温での移動度はn型1500cm2/Vs、p型450cm2/Vsであり、シリコンに比べて顕著に高い移動度は、グラフェンがシリコンに変わる電子素子材料として有望であることを示しています。

しかし、グラフェンを電子素子材料として利用するためには、いくつか乗り越えるべき問題があります。

(1) バンドギャップ

グラフェンはバンドギャップが0の半導体です。このことは、電子素子で必要となる電流の流れないスイッチオフの状況を作ることが困難であることを示しています。ナノリボン化による閉じ込め効果、二層積み重ねることによる垂直電界効果、等の方法でバンドギャップを作ることが期待されています。

(2) 金属接合

グラフェンは金属との接合を作ったときに非常に抵抗が高いものしか作れていません。電子素子は電気を流してスイッチオンの状況を作る必要があります。抵抗の低い接合を作れないと、本来期待される能力が発揮できません。

(3) 結晶成長

グラフェンの性質の先進的研究は、グラファイト結晶から1原子層のグラフェンを引き剥がすことで行われてきました。しかし、この方法では産業化が容易ではありません。高い移動度を示す品質の良いグラフェン結晶を大面積で用意する結晶成長技術が求められています。金属上のCVD成長、SiC上の熱分解成長、などが有力な手法として期待されています。